Aドラム開発秘話 EPISODE
プロローグ:開発の背景
当社がIS014001の認証を取得した1999年(平成11年)の翌年5月、「容器包装リサイクル法」「資源有効利用促進法」など、ゴミ・リサイクル関連の7つの法律を束ねた「循環型社会形成推進基本法」が成立しました。
これによって、大量生産・大量消費・大量破棄の社会から決別し、使ったモノを再び資源として繰り返して利用する、本格的な循環型社会をつくる動きが一気に加速することになりました。
こうしたリサイクルに向けた時代の大きな流れの中で、2000年4月から新製品「Aドラム」の製造と販売を開始しました。
開発時の想い:時代にふさわしい製品へ
開発コンセプトは「省資源で環境に優しい製品」。
すべてを紙製にし、従来のファイバードラムの強度と、リサイクル容易な簡便性を兼ね備えた新製品の開発へ。
長年培った経験と技術を集結して開発されたのが、「Aドラム」です。
先見の明:次世代を見つめる力
実は「Aドラム」の着想は1999年、ISO14001の取得へ向けた取り組みの中で生まれたものでした。「ファイバードラムの最終処分はどうあるべきか」は、業界を牽引するファイバードラムメーカーとして、かねてから課題でした。幸いにも、製品の販売が「循環型社会元年」と時期的に重なることになりましたが、ISO14001の認証を取得した1999年に、開発と平行して「Aドラム販売促進プロジェクト」も発足させていました。
どう販売するべきか
新しいロングセラー製品として期待された「Aドラム」。
その販売促進活動においても、熱い想いと綿密な戦略で取り組みました。
当時の販売に関わった社内スタッフの取り組み、当社の動きの概略をご紹介します。
名称の決定
開発当初、新製品は仮称として「A1ドラム」と呼ばれていましたが、1999年の「販売促進プロジェクト」の正式なスタートに合わせて、正式名称を「Aドラム」としました。その理由としては、「読みやすい」「エース、一番のニュアンスがある」「関西弁でいえば良い(ええ)ドラムで親しみやすさがある」などがあげられます。
これによりプロジェクトの正式名称も、「Aドラム販売促進プロジェクト」としました。
活動のスタートは1999年8月30日。さっそく翌8月31日には、「商標登録願」を特許庁に申請しました。
Aドラムとは何か
社内での綿密な打合せの結果、「Aドラムは、従来のファイバードラムの進化した製品」という位置づけで販売活動を行なっていくこととしました。業界の先駆け的な存在である当社の、長年培ってきた実績と信頼を活用し、「一見成熟した業界に新たな風を吹かせる新商品」として関心を持っていただくという戦略です。
これと同時に、「太陽シールパックが製造・販売する環境にやさしい新しいタイプのファイバードラム」と定義しました。
販売の方法と原則
Aドラムは、製品の多様化戦略をとらず、種類を絞り込んで標準品を作り、標準販売価格を決め、価格を固定しました。また、製品価値を下げないために安売りしないこと、太陽シールパック製のドラムであることを浸透させるためOEM(相手先ブランド商品)生産を行なわないこととしました。
品質と製造工程をめぐって
品質については、リサイクルが本当に可能かどうか、環境への影響をリング付ファイバードラムと徹底的に比較することなどを最終確認しました。また、製造工程の設備についても役割を明確にし、太陽T&Dが最優先で対処することを確認しました。
市場投入への歩み
市場投入直前の流れを、時系列で振り返ります。
直前2ヶ月
Aドラムは高強度・分別が容易などの高機能を付加した新世代のファイバードラムであること、適正な価格で提供することを再確認しました。
直前1.5ヶ月
当初は西日本工場で限定生産となることから、西日本地区(山口、九州地区)を先行販売地域とし、2、3ヵ月後には全国展開を図ることとしました。
市場投入・直前1ヶ月
西日本工場において、製造ラインの電気、エアの接続が終了しました。
市場投入・直前2週間
販売促進活動の人員を任命し、「Aドラム」のサンプルの無償提供を決定しました。
遂に市場投入
2000年4月10日、Aドラムの販売を開始しました。
Aドラム販売開始とエコマークの認定
2000年4月10日、遂にAドラムの販売を開始しました。
販売開始に際して、Aドラムの付加価値を高めるため、ファイバードラム用の原紙として使用している「OTUKライナー」のエコマーク商品認定を取得(2000年5月24日)。当時、ファイバードラム用原紙のエコマーク商品認定取得は業界初でした。
これにより、「太陽シールパックのファイバードラム(Aドラム)の胴部はエコマークの認定を受けた紙を使用して製造している」ことのアピールが可能となり、販売促進活動の追い風となりました。
Aドラムの商標登録
2000年8月25日、「Aドラム」の商標登録願いが認められました。商品区分は「第16類 紙、紙製品及び事務用品」です。
東京パック2002 出展時のサンプル製造
2002年10月1日から5日まで、東京ビッグサイトで開催される「東京パック2002」に「Aドラム」の展示を主目的に出展しました。
出展にあたり、「Aドラム」のミニチュアをPR用にサンプルとして製造。
サンプルは「Aドラムmini」と名づけ、会期中に当社ブースに訪れたお客様にお渡ししました。大好評で、配布した数は10,000本にも達しました。
総括
こうした販売促進活動を通して、Aドラムは、当社の主力製品のひとつとして年を追って順調に売れ行きを伸ばすことができ、今日にいたっています。お客様からは「処理のしやすさ」という点で多くのご評価をいただいています。これはAドラムの開発、そして販売促進活動のコンセプトが正しかったことを示すものと自負しています。
製品の開発コンセプトを練り上げて、そこから販売戦略をスタートさせたのはAドラムが初めての経験でした。市場での展開では「省資源で環境に優しい」というコンセプトから外れないように留意し、高付加価値の製品であることを強く全面に押し出す、つまり品質で勝負するというメーカーの立場を鮮明にすることにこだわり、それを具体化したものが「Aドラム」だったといえます。
今後、当社が新製品を市場に提案するときは、「Aドラム」と同じような想いと方向性で取り組むことになるでしょう。
「Aドラム」の開発は、企業が持つべき環境へのまなざしを、メーカーとしてどう反映させるか、という姿勢が結実したものといえるかも知れません。